はじめに
食品業界において、カンピロバクターによる食中毒は深刻な問題です。特に鶏肉を介した食中毒が多数報告されており、食品の安全確保に対する消費者の意識の高まりとともに、より厳格な衛生管理が求められています。HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Points)は、食品の安全性を確保するための国際的に認められた手法であり、カンピロバクター対策にも有効です。
本記事では、HACCPを導入することで、カンピロバクターによる食中毒を効果的に予防するためのステップを解説します。
カンピロバクターとは?
カンピロバクターは、鶏肉をはじめとする家禽類に多く存在する細菌です。摂取すると、下痢、腹痛、発熱などの症状を引き起こします。カンピロバクターは熱に弱いため、十分な加熱調理を行うことで殺菌できますが、生食や加熱不十分な食品を摂取することで感染リスクが高まります。
HACCP導入のメリット
HACCPを導入することで、以下のメリットが期待できます。
食中毒発生の予防
食品の製造工程における危険因子を事前に特定し、対策することで、カンピロバクターによる食中毒発生のリスクを大幅に低減できます。
食品の安全性の向上
消費者への信頼度を高め、自社のブランドイメージ向上に繋がります。
法規制への対応
食品衛生法などの法規制への対応が容易になります。
コスト削減
食中毒発生による損害賠償や回収費用などを削減できます。
HACCP導入のステップ
HACCP導入は、以下の7つの原則に基づいて行われます。
1. 危険分析
カンピロバクター汚染のリスクが高い工程を特定します。( 鶏肉の受入、解体、加工、調理など )
2. 重要管理点(CCP)の決定
危険分析の結果、カンピロバクター汚染を防止するために特に管理が必要な工程を決定します。( 鶏肉の洗浄、加熱調理など )
3. 臨界限度の設定
各CCPにおいて、安全性を確保するための許容範囲(例えば、加熱温度、洗浄時間など)を設定します。
4. 監視
設定された臨界限度が守られているか、定期的に監視を行います。( 温度計による温度測定、残留塩素濃度の測定など )
5. 是正措置
監視の結果、臨界限度が逸脱した場合に実施する対策をあらかじめ定めておきます。( 異常な製品の廃棄、再加熱など )
6. 記録
監視結果、是正措置などを記録し、HACCP計画が有効に機能していることを確認します。
7. 検証
定期的にHACCP計画の見直しを行い、必要に応じて改善を行います。
カンピロバクター対策の具体例
鶏肉の取り扱い
・生肉と調理済みの食品は、別々の場所で保管し、調理器具も使い分けます。
・鶏肉を解体する際は、十分に洗浄・消毒を行います。
・鶏肉は中心温度75℃以上で1分間以上加熱調理します。
衛生管理
・作業者の手洗い、消毒を徹底します。
・調理器具、作業台などは、使用後に洗浄・消毒を行います。
冷蔵庫の温度管理を徹底します。
従業員教育
・HACCPの仕組みや重要性を従業員に周知徹底し、意識を高めます。
まとめ
HACCPは、カンピロバクターによる食中毒を予防するための効果的なツールです。HACCPを導入することで、食品の安全性を高め、消費者の信頼を獲得することができます。